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【おそ松さん】歪んでいるというには、あまりにも深く

第4章 私と死んで下さい



「相変わらず酷い部屋だね」

オレはポツリとそう言って、彼女の部屋を見回した。
散乱した服、所々におかれた本の山。

小さなベットの隅で、オレの想い人は紫色のキャスケットをかぶって三角座りをしていた。

長い髪が邪魔なのか部屋の中でよくキャスケットをかぶっている彼女。

少しズレてるんじゃって時々思う...。

「いい加減片付けたらいいのに...」

オレはそっと彼女の横に座ってボソリと呟く。

ギシリとベットから歪んだ音がすれば、オレを無視して部屋の隅へと歩いていく彼女。

放りっぱなしのスマートフォンの中身をすいすいと指で動かす。


あぁ、本当に今日もなんて綺麗なんだろう。

彼女は俗に言う物書きという存在で、でも小説家と言うにはその文章は美しすぎた。

美しい事が悪い事というわけじゃない。

でも世の中と言うのは、美しいだけでは語れないほどに汚れているし

ほら、オレの存在とか?

なにより、毒気のない文章ほどつまらないものなどない。

毒気がなく透明で美しい文章だけを描く彼女は、この世界ではいらない存在なのかもしれない。

「ねぇ、また切るの?」

部屋の隅で、美しいを描く彼女がまた自分を美しく染めようとしていた。

「ううっ...」

小さな悲鳴と共に彼女の白い腕が朱で染まった。
小さな刃物が彼女の手首を掠める度に、ぷつぷつと赤い玉ができる。

いつもの光景、いつもの行為。

薄暗い部屋の中で、彼女は痛みに耐えて耐えて、腕からも瞳からも心に貯めきれない分の水分を流す。

そんな弱い彼女に、オレは目を瞑ってそっと祈る。

今日は多めに切りませんようにって...。

今日は彼女の痛みが少しでも少なくなりますようにって...。



まぁ、無駄なんだけど...。
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