第1章 【1話】あの時助けた子は、もう高校生です
長い入学式を終え、一度職員室へ戻る。
明日の持ち物やら予定やらの紙をすべておいてきてしまった。
まったく、これじゃ先が思いやられるな。
なんて思いながら速足で8組へ向かう。
「あっ」
突然、膝に鈍痛が走った。
自分でもいったい何がどうしてこうなったのか理解ができない。
ただ一つ分かったのは、さっきまで生徒が見えていたのに、突然床が見えたことだ。
数秒、書類を廊下にばらまいたまま、床に手を付けて制止する。
―私、盛大にずっこけた……?
理解した途端、顔が燃えそうなくらい熱くなった。
誰も見ていない、誰も見ていない。
そう案じながら何もなかったかのように片膝を立て、立ち上がろうとした。
「先生、大丈夫ですか?」
見られてた。
この靴の色、新一年生。今年度ほとんど毎日顔を合わせる生徒じゃないか。
もうここから立ちたくない。
しばらくこのまま固まっていたい。
しかしそうもいかないので、私はゆっくりと立ち上がり、書類を受け取るために生徒の顔を見た。
…、どこかで見たことある顔だな。
いや、もっと幼かったような気がする。
もっと、中学生とかではなく、小学生くらい幼い顔…。
「…お姉さん……?」
「…あの時の少年?」
ほぼ同時に発せられた言葉。
自分の声で若干かき消されそうだったが、何とか聴きとることができた。