第1章 【1話】あの時助けた子は、もう高校生です
「1年8組担任、水野遥希。担当教科、国語」
高校教師になって二年目。
新入生の担任を任されるとは思ってもいませんでした。
壇上に上がるのは流石にもう慣れた。問題はそこじゃない。
新入生(特に8組の生徒)が私を凝視している。
それはもう、体に穴でも開くんじゃないかってくらい。
震える脚で体を一歩前に出し、深々と頭を下げる。
―早く「続いて…」って声かけて!
10分くらいの時を感じ、ようやく「続いて」が来た。
しかし、この間おおよそ5秒。
私の緊張は、時すらも遅めてしまうようです。
***
それから数分、やっと10組の副担任まで終わり、改めて皆で頭を下げた。
―終わった…。
いまだ震える足で、階段を下り、席へと戻った。
正直、こんな状態で担任が務まるのか心配である。
担任ということは、朝、放課後前と必ず生徒の前に立ちHRをしなければいけない。
考えただけでもくらくらする。
水野先生、大丈夫?貧血?」
そう声をかけてくれたのは、10組担任の浜松先生。
去年この方のクラスの副担任をして、担任についていろいろ学ばせていただいた、教師になってからの恩師である。
恩師でもあるが、どちらかと言ったら優しいおばあちゃんのような感じだ。
「今年度のことを考えたら少し…。」
「初めての担任だものね…。困ったらいつでもいらっしゃい。」
腿に乗せている手にそっと自分の手を重ね、軽く握ってくれた。
程よい体温で私の緊張を溶かしてくれる。