第1章 これを恋と呼ぶのなら1(おそ松)
それ以来、会った時は私の仕事の愚痴を聞いてもらうのが習慣になった。
第三者の率直な意見を参考にしたくて…というのは嘘で、本当はおそ松くんに慰めてもらったり、癒してもらいたかっただけだ。
今日もそう。
公園のベンチに並んで腰掛け、話を聞いてもらう。
おそ松くんは柔軟に物事を考えて、納得のいく言葉をくれる。
「きみはよく頑張ってる。よしよし」
話しながら、ニコッと微笑む彼に心臓が跳ねる。
夕暮れ時、彼の頬にまつ毛の影が落ちている…
髪の毛が風に揺れる…陽に透けて少しだけ茶色く見える…肌のなめらかさ…
ゆっくり瞬きするしぐさ…
おそ松くんのことをもっと知りたい。彼に近づきたい。
そんなことを思った。
「おそ松くんのことが好き」
言葉がこぼれ落ちる。
思ったことを口にしてしまったと気付いたのは、言ってしまった後で…顔がどんどん熱くなっていく。
彼の顔が見られないよ。
どうしよう…
ふと、両頬に慣れない感触。
おそ松くんの両手が頬を包み込んでいた。
彼のてのひらの熱が頬に伝う。
彼の顔が近づいてくる…
真剣な顔…ちゃんとしたら結構整ってるのかも…
そんなことを漠然と考えていたら、唇に柔らかい感触…
キスをされた。
右頬を包んでいたてのひらは私の腰のあたりへ移動する。
触れて離れて、また触れて…少しだけ開いた唇の隙間に、おそ松くんの舌が入り込む。
やわらかい…あったかい…
時折、おそ松くんの息づかいが伝わる。
「んっ… ふっ…」
普通に話している時と全然違う…男の子なんだな…
どうしよう、気持ちいい…
でも、息継ぎがうまくできなくて…息があがってしまいそう…
おそ松くんのわき腹あたりに手をまわし、パーカーを控えめに掴んでみる。
次の瞬間、はっとして唇を離す。
「はあっ…はあっ…ごめん…」
彼もすこし息があがっている。
呼吸を整えた後、こちらをゆっくりと見つめる。
「ゆいちゃんに触りたくなっちゃった…」
潤んだ瞳、さっきのキスで濡れた唇…苦しそうなおそ松くんの表情…
私もあなたに触れてみたい…