第7章 この部屋はあたたかい(おそ松)
ピンポーン
チャイムが聞こえたら彼が来た合図…どうしてって、他の人は誰も訪ねてこないようになっているから。
「ゆいちゃ〜ん、遊びに来たよ〜」
満面の笑みでおそ松くんが部屋に入ってくる。
今日は赤いつなぎを着て、右手には何かが入ったビニール袋を持っている。きっとビールとおつまみが入っているのだろう…
「よっこいしょっと」
そう言いながらおそ松くんは床に座り、置いてあった猫のぬいぐるみをむぎゅっと抱き潰した。
「は〜 疲れた疲れた〜」
ビニール袋の中にはやっぱり缶ビール。
ぷしゅっと開けて一口流し込み、「ぷはぁ」と呟く。
「今日は疲れてるみたいだね、何かあったの?」
「いやぁ、パチ打ちに行ったんだけど、全然当たりがこなくって、あとちょっともうちょっとって随分粘って打ち続けたんだよね〜 そしたら最後におっきい当たりがきて、やりいって思ったんだけど、肩が凝っちゃってさぁ〜」
猫のぬいぐるみを枕にして床にねっころがるおそ松くん…あいかわらずだなぁ…
「だから今日は金あるから自分でビール買っても平気」
なははは と笑い声を上げ、鼻の下を擦っている。
私はくすくす笑いながら、おそ松くんのさらさらした髪の毛を撫でる。
「へへっ きもちい」
おそ松くんは私の方へ顔を向けて、ニカッと笑う。
彼はこんな風に、少し前から私の家を訪れる…
きっかけはなんだったけな?あまり覚えていないんだけど…
街で彼を見かけて…私が一方的に好きになってしまった…
おそ松くんは笑顔が本当にかわいい…
子どもっぽいけれど、頭の回転が速くて賢くて、妙に大人びた表情をすることもある…
私はこの男の子に夢中になってしまった。
でも、こんなにも好きになってしまったことは彼には内緒…