第6章 真昼の夢(十四松)
「わたし…今のままの十四松くんがいい…彼女のことを忘れられなくてもいい…難しく考えなくていいから、これからも会ってほしいの…」
気がつくと頬に涙が流れている…本当の本当はわたしだけを見ていてほしい…でも…このまま彼と会えなくなってしまったら、もう終わりになってしまう…
その場で俯いて涙を流した。
「泣かないでよぅ…」
十四松くんは周りも気にせずに芝生に座り込むわたしにガバッと正面から抱き付き、肩を震わせている…
向かい合って抱き合い、十四松くんのほっぺがわたしのほっぺに触れる…彼の流す涙とわたしの涙で濡れて、どちらのものか分からない…
「また遊んでくれるの?」
耳元で十四松くんの声が響く…
「うんっ…」
大きく頷きながらそう伝えると、わたしの顔を覗きこみながら、
「あは、これからもよろしくね」
泣き笑いの顔でそう応えてくれた。
緊張していた心がするりと解れる…よかった…これからも十四松くんの笑顔に会える…
4月…
仕事が始まったから、以前のように頻繁には彼に会えなくなってしまったけど、お休みの日は河川敷の芝生の上で日向ぼっこをしたり、やきうをしたりして過ごしている。
「ゆいちゃん、今日の晩ごはんなに〜?」
「えへへっ 今日は温玉のせカレーで〜す!」
「おおぅ〜、山盛りでオナシャス!」
最近は、わたしの部屋に来てごはんを一緒に食べる機会も増えている。
ちょっとずつ、わたしたちは近づいていると思う…
「でもね、まだカレーの材料買ってないの。買い物一緒に行ってくれる?」
「もちろん!僕も手伝うよ」
わたしは笑って立ち上がり、服についた草をはらう。
ぶるるる〜ん と回りながらスーパーの方へ歩き出す彼の後について、ゆっくりと歩き始めた。
〜END〜