第5章 君と海の底へ(おそ松)
「ゆいちゃん、俺さぁ、旅に出ようと思ってるんだよね」
キスの後、おそ松くんの余裕が無くなってしまい、水族館を早々に切り上げ、ホから始まる三文字の場所に出かけてさんざん抱き合った。
帰り道、いつもの調子でゆる〜くびっくりするようなことを言う彼…
「旅に出る? どういうこと?!」
驚きすぎてつい大きな声を出してしまう。
「テレビで観たんだけどさぁ、都内の落とし物のお金の年間総額が33億円もあるんだって!じゃあ、日本全国だといくらになるか…考えただけで興奮して鼻血出そうじゃね?って話になって、兄弟で手分けしてお金を拾いに行こう!ってなったってわけ」
へへへっ と鼻の下を擦りながら笑う彼…
…おそ松くんたちはありえないことを思いつく…「すっごくいいことを思いついちゃった」と行く気満々の彼に返す言葉が見つからず、苦笑いするしかない…
「ゆいちゃ〜ん 俺、億万長者のカリスマになって帰ってくるから待っててね〜」
笑顔で親指を立てる仕草をするおそ松くん…
もう…本当に彼にはかなわないや…
「連絡忘れずにちょうだいね」
「するに決まってる〜毎日するよぅ」
「毎日かぁ、絶対しないな」
「えぇ〜ひど〜い、するってばぁ。ところでお腹空かない?俺焼き肉食べた〜い」
私はきっと…彼が帰ってくるのを大人しく待つのだろう。
すぐに帰ってくるような気もするし、帰ってこないような気もする…そんな気持ちでいないと、彼とは付き合えないのだ。
「お土産話を聞かせてね」
笑っておそ松くんにそう伝えた。
〜END〜