第5章 君と海の底へ(おそ松)
赤塚駅でおそ松くんと待ち合わせ。
一昨日の夜、夕ごはんを食べ終わった後で、満面の笑みで鼻の下を擦りながら、
「デートしようぜ〜 俺がエスコートするからさ」
なんて言いだしたのだ…
おそ松くんとデートらしいことをするのが実は初めて…
嬉しい反面、どこへ連れていってくれるのか、ちょっと不安だったりする…
…待ち合わせの時間を10分過ぎたけど彼の姿は見えない…まぁ、遅れてくるだろうとは思ってたけど…
「お待たせ〜」
ゆる〜い声が聞こえて振り向くと、いつもとちょっと違うおそ松くんが立っていた。
赤いニットキャップにうすい青と白のボーダーTシャツ。一番上のボーダーだけ赤色で、アクセントになっているデザイン。腰に赤いチェックのシャツをゆるく巻いて、グレーのスウェットパンツをロールアップして穿いている。スニーカーは赤いハイカット、首もとにはヘッドフォンが巻きついている。
…ちょっと好きな服装…普通にかっこいいかも…
いつもよりおしゃれなおそ松くんに胸が高鳴ってしまう…
「今日、いつもと雰囲気違うね…どうしたの?」
「へへっ!デートだからオシャレしてきた。どう?似合う?」
鼻の下を擦り、くるりと私の目の前で一回りしてみせる。
「うん、かっこいい…どきどきする」
「なっ… ゆいちゃん、素直じゃ〜ん」
素直な感想を伝えると、ちょっと驚いたように彼の瞳は揺れたけれど、でもすぐにいつもの調子に戻り、ニヤニヤと笑う。
「じゃ、早速行こうか!」
「うん!」
頬をわずかに赤く染めた彼の手をとり、私たちは歩き始めた。