第4章 僕は君の猫(一松)
誰かの生活のリズムの中に自分が入り込むということは、その誰かに少なからず影響を与えるということだ…
そんな当たり前のことを、俺は今、身を持って知った。
「おでん食べ行こうぜ〜」
おそ松兄さんがいつもの調子で笑いかける。
家に戻ってから、俺は彼女に出会う前と変わらない日々を送っている…
兄弟とのゆるい毎日は続いている。
でも、ゆいさんとのやり取りや、彼女のくれた言葉を頭の中で繰り返し思い起こしていた。
彼女は大人で、好きなだけじゃだめだということをちゃんと知っていた。
…俺はまだ子どもで、誰かと時間を共有するには早すぎたのだ…
彼女は決して責めなかったけど…俺には人と向き合う準備が整っていない…
『 自分を愛して、信じてあげてね 』
俺は簡単には変われない…
でも…いつか、自分のすべてを懸けて誰かを愛せる日が来るのだろうか?
簡単には変われないけれど…彼女がくれたこの胸の痛みと向き合って生きていきたいと思った。
「一松はおでん食べ行かないの?」
部屋で座ったままの俺におそ松兄さんが声をかける。
兄弟たちは出掛ける仕度をして、部屋の外へ出るところだった。
「…いくよ」
ゆっくりと立ち上がり、みんなの後について部屋を出た。
〜END〜