第9章 〜コータロー君の願い〜
白く、長い廊下。
両側に並ぶ、白い扉。
すれ違う白い服の人達は
みんな忙しそうで…
ドアをひとつひとつ、
そーっと、ほんの少し開けながら覗いてみる。
邪魔にならないように、そーっと。
…今日はみんな、忙しそうだなぁ。
静かにドアを開けて、次のドアへ。
…あ、ここは、開けちゃいけない感じ。
今までいっぱいドア開けてきたから、
ドアの向こう側がどんな雰囲気なのかは
開ける前、耳をくっつけただけでわかる。
(まぁ、今でも時々、
ダメなドアを開けちゃうけどさ。
そんな時は素早く、
ニッコリ笑ってすぐ閉める。
怒られる前に素早く。それがコツ。
ここは学校と違うから、
追いかけてきてまで怒る人はほとんどいない。
みんな、忙しいからね。)
次、行こ。次。
誰か、遊んでくれないかなぁ。
…あれ?
ここ、電気ついてないのに、
今、中でなんか、音がした。
…ほら、“うー”みたいな声とか
バンッ、みたいな音とか、
小さいけど、確かに聞こえるって。
ド、ドロボー?
それとも、
まさかの、ユーレイ?!
うそっ、
そんなん、どっちも、俺、会ったことねーし!
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普通の小学生なら逃げ出しそうなこんな場面。
でも、
この子は“普通の小学生”ではないので…
『ドロボーかなぁ?
ユーレイかなぁ?
…どっちにしても、初めてだっ!』
なーんて言いながら、ドアを開けちゃうんです。
あぁっ、こら、
ワクワクした顔する場面じゃないですよ、
静かに逃げて、大人に報告しなさーい、
…って言ってもムダですよね、
双子の弟、光太郎君!!