第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
スマホをポケットに入れて
見慣れた駅を見上げる。
いつも通学で使ってた駅。
でも、今日の行き先は、仙台駅。
何もかもケリがついたし、
気持ちよく静かに出発だ。
…そう思ったのに、
ホームに、怪しい(笑)集団が。
『おい、黙って行こうなんて水くさいぞ。』
…と、しかめっつらの岩泉。
『見送りは地元組に任せろ!』
…と、ニヤリと笑う花巻。
『お前らはともかく、なんで、』
『松川先輩っ、荷物、持ちます!』
『いや、俺が持ちます!』
…渡や、金田一に、
『松川先輩、この腕時計、いいっすね。
別れの記念に、俺、もらいましょうか?』
『は?お前、バカじゃねーの?』
…国見や矢巾、他の後輩まで。
岩泉と花巻が、かわるがわる、口を開いた。
『昨日、お前の母ちゃんから連絡あって。』
『"一静が見送りいらないって言うんだけど
親はイヤでも、お友達なら嬉しいと思うから
賑やかに見送って頂けないかしら?"って』
…母さん、いつの間に!?
なんだよ、この根回しのよさ。
これが"静ママ"の世渡り術か?
『親から直々に頼まれたら断れねぇだろ。』
『いや、多分、岩泉は、
お前の母ちゃんだから引き受けたんだぞ。
コイツ、着物美人、好きだもんな。』
『そんなんじゃねぇっ!』
ゴツン。イテッ(>_<)。
…見慣れたやりとりに笑ってしまう。
『ほら、お前ら集まるとうるせぇじゃん。』
『何言ってんだ、
及川がいない分、まだマシだろーが。』
『それもそうか(笑)』
そんなわけで、
予想していなかった賑やかさで
みんなで仙台駅に行くと
なんとそこでも同じ展開で
新幹線のホームに"外の家族"が集まっていて
『一静、成人したら飲み行くぞ!』
『マツ、帰省する時は連絡しろよな。』
『松川先輩、頑張ってください!』
…などなど、それはそれは恥ずかしいほど
盛大に見送られることになってしまった。
きっと今ごろ、母さんは家で
時計を見ながら、この様子を想像して
ニコニコしてるに違いない。
くそー、最後の最後まで、
母さんの方がウワテだったな(苦笑)
だけど、こんなことする位なら
きっともうすぐ、元気になるだろ。
…少しホッと出来たことこそ、
実は母さんからのメッセージなのかも。
"心配しないで、いってらっしゃい!"
そんな気持ちを受け取った気がした。
