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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『今になって、綾の気持ち、
少し分かる気がしてきた。

きっと、一静に
ご飯食べさせたり、
何気ない話をすることが、
家族を手放した綾にとって
すごく、嬉しかったんだろうね。』

『…そんな、大層なことは…』

『話をね、黙って聞いてくれるだけで
すごく、助けになることってあるのよ。
何をしてもらうより、すごーく。』

『…』

話、聞いたり
飯、食ったりしただけじゃねぇけど。

多分、母さんもわかってっけど。
さすがに言えねぇけど。

『でも、これ以上の深入りは禁物よ?』

『…わかってっし(苦笑)』

『綾は、もう、大丈夫。
今度は…私が、これからのこと考えなきゃ。』

これから?

『…これから、って、店?』

『うん。』

『…閉めるとか?辞めるとか?』

『どっちにしようか、迷ってる。』

『は?なんで?なくしちゃダメだろ?
…大事な場所、なんだろ?』

『でももう、
何のためにあの店開けたらいいのか…』

何のため?

『それこそ、俺の為じゃ、ダメなわけ?
息子を進学させるため、って理由じゃ
頑張れないんだ?』

『違う。
一静のためなら、あそこじゃなくても
どこででも、何でもするわよ。
…あそこは、思い出がありすぎてね、
もう、どんなに頑張っても待っても…』


ポトン。
こぼれる、涙。
…初めて見る、母親の、涙。


どんなに頑張っても、
一番認めてほしい人は、もう、いない。

どんなに待っても、
一番会いたい人は、もう、来ない。


"泣くなよ"って
言いたかったけど、言えなかった。

だって、絶対、泣きたいはずだから。
きっと、今まで、我慢してきたはず。


…俺がいたら、
心置きなく泣けないかな?

『ほら、これ。』

枕元にあったティッシュを
箱ごとガツンと乱暴に渡して、

ベッドの下にあったゴミ箱を
母さんの近くに足で動かして、

『また明日、学校の帰りに来るからさ。
なんか家から持ってくるもんあったら
連絡してよ。じゃーな。』

…なんか、ホントは心配なのに、
ザツな感じにしか出来なかった。

家族、って、大変だ。
大人、って、大変だ。

だけど、こんなに母さんのことを
"家族"だと思ったことも
"大人"だと思ったことも、
今までなかった気がする。

俺にもちゃんと話してくれて、ありがとう。


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