第4章 ~いつか叶う、恋~(西谷 夕)
バタバタバタ、バンっ。
『あ、いたいた~!』
教室の外から聞こえた声に、
私たち三人、フリーズする。
『あれ、取り込み中か?』
…西谷君…
『うん、取り込んでる。何?急ぎ?』
『いや、急ぎじゃねぇけど。
あれ?急ぎか?ん?どっちだ?』
『どっちよ?!なにっ?』
『なんだよ、カオリ、機嫌わりぃなぁ。
えーと、そうだ、俺、明日の放課後、
バレー部の後輩の練習相手、頼まれてさ。
だから、明日の自習、
昼休みに出来ねぇかな?って相談。
いつもの森島の宿題ノートは
ちゃんとやってきてっから、
それも先に渡そうと思って。』
『ちょーどよかった。ね、ニシノヤ、』
カオリが手招きすると、
西谷君は教室に入ってきた。
『なんだ?』
『この人、あんたに用があるんだって。』
『『え?!』』
…彼女と私が同時にびっくりする。
カオリは、キッと振り向いて
彼女に言い放った。
『あたしらがいたら話せないんでしょ。
立ち聞きなんかしないから、
この際、どーぞごゆっくり。』
そういうと、カオリは、
私の手を引っ張り、
二人を教室に残して扉を出ていく。
『…ちょ、カオリ…』
ズンズン歩いていたカオリは
ピタッと足を止めると
クルッと振り返って
忍び足で廊下の柱の陰に隠れた。
カオリに、小さな声で話しかける。
『…立ち聞き、しないんじゃ…』
返すカオリの言葉は、
小さな声だけど、きっぱり。
『するに決まってるでしょ!』
…だよね~、するよね~ (^^;
二人でこっそり覗きこんだ
夕暮れ時の教室には、
西谷君と、私のライバル?!二人きり。
どんな展開になるのか
全く予想が出来なくて、
しかも、他人のこんな場面を
こっそり覗くなんてシチュエーションも
ドラマかマンガでみたいで、
私の平凡な毎日の出来事とは思えない。
まるで今から
自分が告白するんじゃないか、
…というくらいドキドキしながら、
物音をたてないように
静かに教室を覗く。
息が止まりそうな私。
鼻息荒い、カオリ。
戸惑い全開の彼女。
そして、わけがわかってないから
至っていつも通りのノンキな西谷君。
…放課後青春ドラマの始まり、
みたいなシチュエーションは、
否応なく、転がり始めた。