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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



…ここの天井、こんな柄だったんだ。
今までちゃんと見たことなかったんだな。
ずっと、頭の上にあったのに。

バレー部が練習で使う体育館の
玄関横にある、小さな会議室。

てっきり白だと思い込んでいた天井の色が
実は薄いグレーで、さらに、うっすらと
幾何学模様までついていることに驚く。

…興味がないと、
目にうつってても
全然、心にはとまらないんだな。
それって、見えてないのと同じじゃん。


ブラインドを閉じたままの部屋は薄暗く、
ボールの音が聞こえない体育館は
痛いほどの静けさ。

ピンと張った黒い合皮のソファは
ひんやりと冷たくて、
でも、
俺の身体が触れている部分だけは
生ぬるくあたたまっていた。

壁の時計をチラリと見る。

もう
ここに寝転がって…一時間、か。


なにも考えたくないのに、
考えなくちゃいけないことは
たくさんあって、
でも、どれもペラペラと
頭のなかを通りすぎていって…

結局、何も答えが見つからない。



カラカラッ…扉が開く音。

『やっば、ここか。』

頭の上から馴染みの声が降ってきた。

ソファから勢いよく起き上がり、
入り口に笑顔を向ける。

『なあに、岩ちゃん。
やっぱり最後は親友に会いたくなった?』

『バカか。
お前の姿が見えねーと、
女子がみんな俺に
"及川さん、どこですか~?"って
聞いてくるから、めんどくせーんだよ!』

『なぁんだ、岩ちゃん、
ヤキモチ妬いてん…痛っ、
ちょっと、顔は、顔だけはヤメテ!』

『こんなとこに隠れてねぇで、
さっさとモテてギッタギタにされて来い!』

『でももう、ボタンも名札もネクタイも
教科書もペンも消しゴムも
ぜーんぶとられちゃってさ、
あげられるもの、何にもないんだもん。
キスならしてあげられるけど、
さすがにキス待ちの行列作らせるの、
学校じゃマズイよね…』

『髪の毛でも抜いて渡してやれ、ハゲ川!』

『岩ちゃん、ひっどーい!ハゲてないしっ!
ほら、今日は特にサラッサラだよ。
女子の心に、最高にカッコいい及川さんを
残してあげないとねっ』

とびきりの笑顔にピースを添えて
岩ちゃんに見せてやる。

返ってくる言葉は、
聞かなくても、わかるよ。

『その顔ヤメロ、ムカつく!』

…ほらね。
10年にもなる"阿吽"の関係。

それももう、今日でおしまいだ。


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