第1章 ～二番目の、恋～ (及川 徹)

『なぁ、木兎君、』

『あ、ボクト、でいいよ。』

『…んじゃ、ボクト、』

『何だ？岩っち。』

…岩っち、だって(笑)
木兎のいつものペースに戸惑ってる、
岩ちゃんの顔が面白い。

ね、予想の斜め上をいく
コミュニケーション能力だよね！？

そんな気持ちで岩ちゃんを見たら、
チラッとこっちを見た岩ちゃんも、
"こいつ、スゲー、壁、ねぇな。"
…という顔をしてる。

だろ、だろ？！
久しぶりに、
阿吽で通じた感じが心地よくて、嬉しい。
さすが岩ちゃん。

…でも、言葉は、相変わらず辛辣。

『コイツ…及川は、ボクトから見て、ヘタか？』

『ちょっと、岩ちゃんっ、
"ヘタか？"はなくない？
言葉、あんまりにもストレートすぎっ！
及川さん、傷付くっっ！』

『んー、ヘタかどうかってより、』

『待って、コタローちゃんもっ！
そこはウソでもいいから
ヘタじゃないって、即、否定してほしーとこっ！』

…二人とも、俺の言葉、完全に、無視。
綾ちゃんが、気の毒そうに
こっちをチラチラ、見てる。

『オイカワ、なーんか、遠慮してね？
全力出せば、すぐ、こっち来れんのに。』

遠慮？
俺が？
誰に？
何に？

『…及川、遠慮なんかしてんのか？
お前らしくねぇな。気持ちワリぃ。』

『遠慮なんかしてないしっ。
コタローちゃんっ、テキトーなこと
言わないでくんないかなっ(怒)』

『テキトーじゃねぇよ。
何に対してかわかんねーけど、
最近のオイカワのトス、なんか
予想の範囲、って感じなんだよな。
…だからほら、今日の3点目みたいなの、
あぁいうの、久々に見た。
あれ、ゾクッとしたなぁ。
俺、打ちたかったわ。』

…今日の3点目。
レフトへの、超 ロングパス。
岩ちゃんなら、木兎なら、
きっと決めてくれたトス。

『あー、そっか、わかった！
オイカワ、ヘタなんじゃなくてさ、
トス、あげる相手、間違ってんだって。
早く、本気だしてこっち、来いよ。
オイカワのトス、俺とか牛若なら
バッシバシ、決めるからさぁ。』

『…そりゃ、行けるもんなら行きたいけどっ！』

『だったら、遠慮してねぇで…』

『してないって！
だいたい、俺が誰に遠慮すんのさっ？』

堂々巡りになりかけたその会話に
そっと入ってきたのは、



『…もしかして…私？』



綾ちゃん。