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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)



東京で迎える三度目の春。
今年は、勝負の年だ。

先輩達がいなくなって、
俺達3年が中心になる。

卒業してから
プロになるためにも、
全日本を狙うためにも、
この一年で
どれだけ結果を出せるかが勝負だ。

そして、もうひとつの勝負も。

…トビオが、東京の大学に来る。
もちろん、バレーをするために。
もちろん、全日本を狙うために。

チームとしての勝利も
トビオへの先輩としての意地も
どっちも絶対、譲れない。

…ま、トビオのことはともかく(笑)
将来に向けて結果を出したいのは
俺だけでなく木兎も同じはずで、

ここからの未来に向かって
1点も、1プレーも無駄にしない気合いで
俺たちは、毎日コートに立っていた。

コンビを組んで3年目。
もう、誰が見たって"安定の二人"。

今日だって、練習試合とはいえ、
どこで関係者の目に留まるかわからない。


『コタローちゃんっ!』

俺のトスに飛び付く木兎の姿は、
夜の森を羽ばたく、
猛禽類の美しいシルエット。

…カスッ。

え?木兎が空振り?

『ゥガーッ!ごめん、オイカワ、も一回!』

もちろん、何度でも。
木兎の攻撃あってこそ、
俺のトスが光るんだから。

『さぁ、どーぞっ、コタローちゃんっ!』

…ビタッ。
ブロックの真正面。

『クソーっ!ごめん、オイカワ、も一回!』

…おかしい。
コンビも3年目になれば
"たまたま"タイミングがあわなかったのか、
そうでないのかくらい、すぐにわかる。

案の定、
次も見事にブロックされ、
木兎のミミズクヘッドは
結局その日、クッタリと萎れたままだった。

もちろん、この大学のことだ。
レギュラーはもちろん、控えにだって
相当な力の持ち主がわんさかいる。

木兎一人が不調でも、それだけで
試合に負けるようなことはないし、
その日のメンバーの調子を見分けて
トスをあげるのが俺の仕事だから
チームとしては勝ったのだけど。


…木兎が輝かないと、
なんだか、居心地が悪い。

同じコートに立つ俺も
セッター冥利に尽きるほど、
絶好調の木兎を見るのは
気持ちいいから…


『コタローちゃん?』

そこそこ応援も来てたし、
女の子の声援もあった。
…いや、そんなことで
イチイチ調子が左右するようじゃ
それこそ困るんだけど(笑)

それにしても、
しょぼくれる理由が見当たらない。


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