第1章 ~二番目の、恋~ (及川 徹)
先に口を開いたのは、綾ちゃん。
『及川君が来てくれたんだね、ありがとう。』
『…誰が来ると思ってた?』
『うーん…光太郎君は、
"一人で夜道歩くなよ。
頼れるエスコート、呼んでるから
ここで待ってな。"って言ってた。』
『…それ、どう聞いても俺でしょ(笑)』
『そうかな、とは思ったけど、
もしかしたら、赤葦君とか木葉君かも、
って、ちらっと思ったりして。』
『あの二人のこと、知ってるんだ。』
『うん。
付き合い始めてすぐの頃に二人に紹介してくれて
それからは、何回も会った。
あの三人、ほぼ、兄弟、というか家族みたい。』
『俺、さっき初めて会った。
ほんと、3人で1セット、ってくらい
ぴったりの組み合わせだね。』
『うん。…彼らは、光太郎君と一緒?』
『3人で飲みに行ったよ。
だから綾ちゃんのエスコートは俺の役目。』
『頼ってばっかりでごめんね。
でも嬉しい。ありがと。』
…沈黙…
『言い…』『聞き…』
二人の言葉が同時に重なってしまい
『ごめん、綾ちゃんからどうぞ。』
『ううん、及川君から…』
『いやいや、』
『どうぞどうぞ、』
的なダチョウ倶楽部みたいなやりとりを
何度か繰り返し、結局、俺から話す。
『あのさ…言いたくなかったら、
何も言わなくていいんだよ。
二人のことだから、
二人が納得してるなら、それで…』
納得、してるんだろーか?
俺、やっぱ、役に立たねーな…
でも、綾ちゃんは
キリッとした顔で。
『ううん、及川君には聞いてもらいたい。
私たちの、約束。』
約束?
そして、綾ちゃんは
少しずつ、話してくれた。
お互いのことを大好きだった二人が
なぜ、別れることにしたのか。
別れたばかりだというのに
綾ちゃんが落ち込んでない理由、
…俺がガラス越しに見た、
まるでプロポーズのような
別れ際の二人の"約束"を。