第10章 それは甘く、強く
LRRRRRR...
なんで電話しちゃったんだろう。
でも、いつのまにかスマホを持っていて
相手は"櫻井さん"
数秒すると彼の透き通った声が聞こえた
〈もしもし〉
『あ、あの、です!』
〈え、あ、ちゃん!!?
ど、どうした?困ったことあった?〉
『あ、いや…その……っ…』
〈…泣いてる?〉
『っ……ごめんなさい、やっぱりいいです』
そう言って静かに通話を切った。
どうしよう。なんで涙なんて…出るの?
櫻井さんは優しいから心配しちゃう…
しかも、けんちゃんがいなくなったなんて
櫻井さんには関係ないのに…
私、櫻井さんを頼りすぎてる。
どうしよ…本当にどうしたらいいの?
『……けんちゃん…っ…どこに…っ…』
ピーンポーン!
その時、久々に鳴り響くインターホンの音
私はすぐに涙を拭いて、玄関に向かった。