第2章 荒野に芽吹いた花の名は【秀吉】
秀吉は、500年先の未来からやってきたという女が眠るその姿を見下ろしていた。
「薬が効いてますから。暫く目が覚めないはすです。」
そう言うと、家康は天守を後にした。
「秀吉様、申し付けられた通り、持ってきました。」
三成がお盆を持って、秀吉の隣に腰を下ろした。
「悪いな、三成。」
秀吉は礼を言った。
「さあ早く、その女が俺に危害を加えるような代物を隠し持っておらぬか…確認しろ。女の身体には、物を隠せる場所があるのだろう?秀吉。」
ニヤリと楽しそうに笑う信長。
「……はっ。」
秀吉は、うやうやしく頭を垂れた。
この得体の知れぬ女を側に置くと言い出した信長様。
本能寺で命を救われたとはいえ、それこそが取り入るための策略であったかも知れない。
懐に入り込み、毒でも盛るつもりかも知れない。
(僅かでも、信長様に危害が及ぶ可能性があれば、それを消し去るが、我が命だ。)
秀吉は、
目の前に横たわる美蘭の着物の帯を解いた。