第3章 送別会(2)
・・・相変わらずこのメンバーだと
騒がしい。
でも、近くに居て居心地が良い。
このメンバーの誰かがいなくなる
なんて考えたくなかった。
でもそれは僕の我儘で。
みんな悲しいのを我慢して
今を楽しもうと、
皆がそろっている今を少しでも
心に残る忘れられないものにしようと
悲しむ素振りも見せずに
こうして騒いでいると思うと。
悲しい気持ちになってはいけない、
と思った。
僕なんかより、いつも近くで
いつも一緒に働いてた5人の方が、
ペアだった松本くんの方が。
僕の何倍も悲しいんだと思うと。
僕がへこんではいけない。
そう思った。
・・・じゃあ今の僕には
何が出来るだろう。
・・・・・・あっ、そうだ。
僕は、いつも首から下げてる
カメラをおもむろに取り出すと。
みんなにカメラのレンズを向けた。
僕に出来ること。
それは今、この楽しそうな雰囲気を
いつでも好きな時に想いだせるように。
・・・いつまでも忘れないように。
カメラに今この瞬間を
この・・・大切な一瞬を収めること。
カシャッ・・・
シャッターを切る心地の良い音が
個室に響き渡った。