第1章 束縛彼氏
「おはよう佐山さん。昨日はよく眠れたかな。眠れたから反応なかったんだよな。」
その声で私は背筋が凍り、足がすくみ動けなくなった。
距離を取ろうとしたが、左手を掴まれてしまった。痛いぐらい掴まれてしまって、折れてしまうのかと思った。
「俺たち、恋人同士じゃん。だから、手を繋いで歩くの変じゃないよな?あれ?佐山さん震えてる?寒いのか?」
「寒くないよ!ありがとう李人さん。」
私は李人さんの顔をまともに見ることができずに下を見ていた。
手が震えているのは、寒いからじゃない。李人さんが怖いからそんな事は言えるはずがなかった。
「なぁ、後で覚えておけよ。」
耳元で囁かれて、ぞわりとする。
あとで何されてしまうのだろうか。早く時が過ぎて欲しいと、心の中で何度もなんども呪文のように唱えた。