第1章 ここは妖館
「あぁ……ここにいたのか。日和」
声が聞こえた
知ってる声
私は大いにそれを受け入れる
「おー、反ノ塚だ……珍しく早起きだね」
「今日はちょっと知り合いがな。手伝ってやろうかと思ったら大丈夫そうだったから」
「フラれたんだ……見た目取り立て屋だもんね」
「それは酷いだろー。俺少し傷付いたよ?ピシ……ってここから鳴ったよ?」
「表情変えずに言われても嘘としか受け取れない……」
そういう私も表情変えずに返しているんだけど……まぁ、そういう会話もある
いつものノリ、というやつ
反ノ塚と長い付き合いというわけでもなくて、かといって短い付き合いでもないはず
きっと
そう思いながら、ふと感じる
「あれ、知り合いって今日来た人?」
「そうそう、こんぐらいの背の……」
あぁ……何かこの間も人が新しく来たばかりで混乱する
自慢でもないし自分でも何とかしなきゃと思うのだが
人の顔と名前を一致させるのに凄く時間が掛かる
そりゃあ春だし、新生活が始まる人が多いだろうけども……私の都合じゃない
でもなぁ、覚えないとなぁ……
挨拶もしないと
きっと哀兎と雪小路さんあたりなら可愛い子大好きだからもう行ってそうだけど……
「はぁ……」
「おいおい、ため息ついてどうした?ほれ、おにーさんが聞いてやるぞ」
「おにーさんは私には居ません。ちょっと春が憂鬱なだけで」
「お前、去年クラスメート覚えるのに一年掛かったもんな……また覚え直しだからな」
「言うな」
皆に番号順で言えるように練習されなきゃもっとかかってたんだから