第2章 歓迎
「狐も」
私のその説明に不備があったわけではない
けれど、苓が珍しく口を出す
「狐も、本当は近寄らせたくない」
おいおい……
本人の目の前で……
狐と言うか妖狐、九尾なんだけど
否定ができない分、辛いなこれ
「といいますと?」
「ただの伝承だけど、狐と猫の間にできた猫。それをこの世に出したくないだけ」
「まぁ、訂正すると、私自身、家からキツく言われてるだけなんだけど」
どのみち、凜々蝶に忠誠を誓ってる御狐神さんには
皆無と言っていいほど無関係の話だ
だから言わなかったのに
言い出してしまった本人を一瞥すると
知らないと言いたげにそっぽを向かれた
……覚えておけよ、仕返しするから
「御狐神さんには凜々蝶がいるし、気にしないで。ただ、普通に仲良くはして欲しいかな」
「もちろんです。先祖返りの家にはそれぞれの決まりがあります。猫実さんこそ、お気になさらず」
「本当、ただの伝承にいつまでもすがってるだけなんだけどね……」
私は困ったようにそれを言うと
主人のもとへ戻る御狐神さんを見送った
それから
入れ替わるように座った苓に静かに言う
「なにがしたかったの」
「優しい声掛けに騙されて面倒起こしそうだったから」
「余計なお世話」
「あっそう」
素っ気なく返されたが
まぁいい
逆にこんなに長い付き合いなのに初々しくても困る
言葉を交わさなくても
視線と仕草でわかる仲
お互いの欠点を補い会う仲
自分の自立を支え会う仲
それを手助けするのが、ここのシステムなのだから
それをきっと、あの二人にも理解してもらえる
ようこそ、二人とも
歓迎いたします