第34章 捕らわれた未来(7)
明朝、合流した三成に家臣達が昨夜の出来事を話す声が、朦朧とした意識の中聞こえてくる。
一旦戦を引き上げ野営地に戻る途中、突然背後から何者かが矢を放ち、奇襲をかけてきた事。
暗くて姿は見えなかったが隊は僅か数人で、青旗を掲げてない所を見る限り上杉の者ではないのは確認できた事を、説明していた。
「……明らかに家康様だけを狙い、毒を仕込んだ矢を放ち逃走した……という事ですね」
「はっ!その後は一度も現れておりせん」
三成達の会話に、俺は首だけ動かし……
「……っ、…はぁ…お、そらく……信長様……をおびき寄せる……ため」
必死にからからに乾いた喉から、声を絞り出す。
支城を守り、今は上杉隊はほぼ壊滅している中、考えられる理由はそれぐらいしかない。
念のため反撃を起こさないように、全滅させるまではまだ戦うつもりでいたとはいえ……
(……いつ撤退してもおかしくない今だからこそ、敢えて毒を仕込んで安易に俺が移動出来ないように……)
そこまで考えて、何か引っかかるものを感じる。
恐らく援軍を呼ばせるのが目的だろうが……
(わざわざ罠だと知りながら、信長様を呼び寄せる可能性は低い)
それに上杉以外の者が動いているとなると、尚更……
なら、他に目的が……
「……今は、何よりも援軍を呼び解毒剤を運んでもらう事が優先です。こちらの準備してある薬より家康様が調合されたものの方が効果はあきらかです」
三成は冷静に分析したようにそう話すと、俺の返事をじっと待つ。
「……毒は、ある…っ…程度吸い出した。致死量にな、る……量では…な、い」
俺は痺れる身体をありったけの力で起こし、三成に向ける。