第33章 捕らわれた未来(6)
「家康様っ!!」
「……大丈夫だ。ちょっと掠った程度で大した傷じゃない」
「しかしっ!出血がっ!!」
「先程の夜襲で矢を打ったのは、明らかに上杉傘下の者ではありませんでしたっ!!」
「一体何者がっ……」
「調べが終わるまで、城には知らせるな……夜の警備を増やして細心の注意を図れ」
「……はっ!」
肩から流れる赤い血は、みるみる羽織に染み込んでいく……
(……汚したくなかった)
野営地から見上げた空には、見事な月が登っていて……
(ひまり……)
無性にひまりの笑顔が見たくなった……