第34章 捕らわれた未来(7)
「……罠か、もしれない……と伝えた上で信長様のっ……判断に、まか…せるっ」
けど、ひまりの耳には入らないようにしてくれ。俺がそう頼むと、三成は黙って頷き天幕の外に居る家臣に伝達を伝える。
(……まさか、三成に頼みごとをする日が来るなんて、な)
俺は額に流れる汗を拭い、もう一度身体を倒す。目を瞑ると浮かぶのはひまりの姿ばかり……
真っ赤に頬を膨らませる姿。
はにかんだように笑う姿。
唇を噛み締め涙を堪える姿。
次々と頭の中で浮かんでは、静かに沈んでいく。
最後に浮かんだのは、心配そうに俺を見上げるひまりの顔。
本当は会いたくて堪らない。
今すぐにでも腕に抱いて、ぬくもりを感じたい。
必死に抑えていた気持ちが、こんな状態の時に限って無駄に押し寄せて来る。
この手で何人もの命を奪い、
泣き叫ぶ声も何回も聞いた。
戦だから仕方ない、と思う冷静な自分と
他に方法はないのか、と考える自分が居て……
(まだだ……まだ、終われない)
痙攣したように震える拳。俺は震えないよう強く握り、額にグッと押し付ける。
こんな所で足を止める訳にはいかない。
急に襲われた眠気。
意識が薄らぐ。
せめて夢の中ぐらい
ひまりに会いたい……。