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イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第29章 捕らわれた未来(2)




今、東の方で上杉傘下の大名が戦を起こし、織田軍の領土の端で攻防が繰り広げられていて、追加軍を送られる前に、潰さなければこっちの支城が危なくなるみたいで……。


「……俺はその戦の一任を任され明後日には、出立する」

「明後日……何でそんな急にっ!!」

「築姫の件でゴタゴタしてたから、ずっと言いそびれてた。それに最初に、志願した時は信長様に止められて……ついこの前、許可が下りた」


ある程度の準備は前からしてあったから、今回はすんなり話が通ったんだ。家康はそう言って、私の手をギュッと握る。

そう言えばあのお披露目の日、

確か信長様が言ってた。



ーー……お前は怪我も治りきらない内に戦場に行くと申し出たり、望んでもない事を受け入れたり、その武将としての心行きは買ってやる。



それを思い出すのと一緒に御殿に居た時、確か佐助君も近々大きな戦が起こるからって、言っていたことも思い出す。


それがこの事だったんだと私は気づいたけれど、あまりにも突然過ぎて、頭がついてこない。

行って欲しくない。
戦なんて危ない所……まだ怪我だって完全に治ってないのに。もしかしたら命だって。

嫌な想像を振り切るように私は頭を横に振り、家康の真剣な目を見て、ギュッと唇を噛み締め本音を全部閉じ込める。握られた手が微かに震えて、それに気づいた家康はそっと私の背中に腕を回し、引き寄せた。


「必ず勝って、帰って来る。ひまりが待ってくれてるって、思うだけで俺は……」


無敵になれるから。


しっかり武功をあげて、自分の力を試して一日でも早くひまりを迎えたいんだ。


「それに……ワサビのお守りがあるから、大丈夫」


家康はそう言って、懐から私が贈ったワサビを型どった人形を取り出すと、優しい表情を浮かべた。


ずっと持ってくれていたことが嬉しくて、私はただ泣きながら頷くのが精一杯だった。





この時、私が飲み込んだ言葉をぶつけていたら。



いつもみたいに嫌だっ!って我儘言えたら。



何かが変わっていたのかな。


ううん。きっと違う。



家康の決心はきっと誰にも、
止めれなかった……。




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