第3章 ときめく時〜家康side〜
(……あれは、ほんと無理)
額に手を当てると頭の中に、鮮明に浮かんでくるひまりの顔。
潤んだ瞳にほんのり桃色に染まった頬、震える柔らかそうな唇。
自分で呼ばせておきながら、心底後で後悔した。
あと少し理性が足りなかったら……
あの後自分が何をしてたか想像するだけで身体が熱を上げる。
「……解ってる。ひまりはいずれ信長様の元に戻す。安全さえ確保されたら、俺は……」
顎を撫でていた手をストンと膝上に落とす。それでもまだ落ち着きを失った手の居場所をどうにかしようと、羽織の袖に忍ばせた。
「俺の役目は……」
俺の役目は終わり。
だから、気づく訳にはいかない。
甘やかす訳にはいかない。
ひまりも……
俺自身も……