第25章 はぐれた心の先に…後日談
正式に迎えに行くまで、
自分の道を見つけるまで、
俺の側で待ってて。
ひまりは、嬉しそうに頷いて笑う。
そう、遠くない未来を夢見ながら、ゆっくりと唇を重ねた。
身支度を終わらせ、ひまりを安土城に送り届ける為、部屋から出る。
すると、そんな俺達に女中達と家臣達が待ってました、と言わんばかりの表情で駆け寄って来た。
俺はひとつ咳払いをしてから、
「今はまだ、許しを貰ってないが……
近々ひまりを迎え入れる。だから、そのつもりでいて」
と、俺が報告すると朝にも関わらず、全員が歓喜の声を挙げ、騒ぎ出す。
「ひまり様、早くお仕え出来る日を心よりお待ちしております」
そう、言われひまりは歓喜極まったように涙を流し、頭を下げた。
「あ…、ありがとうございます。またっ廊下掃除頑張りますので、その時はよろしくお願いします!」
その言葉に今度は全員が挙げた笑い声。
そして、安土城に戻った俺達を真っ先に出迎えたのは……玄関先で仁王立ちする、鬼の様な形相を浮かべた第六天魔王。
ボカンッ!
「痛っ」
思いっきりげんこつを食らわされ、俺は頭を抱える。
「何ですか、藪から棒に……」
「誰がひまりを一晩貸してやるなどと言った?……覚悟は出来てるだろうな、家康?」
信長様がそう言うと、秀吉さんと政宗さんは俺の腕を掴み嫌な笑みを浮かべる。それを見て、悪い予感しかしない。
「感謝しろ家康。大量に仕事を残しといてやった」
「まぁ、ひまりに三日、いや七日は会えないと思え」
「まさか、お前がここまで手が早いとはな……築姫と契りを交わすのが嫌でなかなか腹を括らなかった時とは大違いだ」
信長様はわざと俺にしか聞こえないような声でそう言って、嫌な笑みを浮かべた。肩を震わせながら睨む俺。すると今度は声を挙げて満足気に笑い出すと、ひまりに向かって歩き出す。
(まさかっ!ひまりにも!)
ポコッ
俺のげんこつの何百分の一ぐらいの、力で信長様はひまりの頭を小突く。
「ご、ごめんなさいっ」
「素直に謝るのは良いが、仮にも父親になった俺に、嫁入り前にも関わらず、無断で外泊とはな……」