第167章 はじまりの物語
部活見学の日___
ドアを開き、軽く挨拶と一礼してから道場に足を踏み入れる。胴着姿の部員の人達の邪魔にならないように、端っこに移動して正座をした。
「早速来てくれたのか」
勧誘しに来てくれた秀吉先輩が近づいて来て、私は軽く頭を下げ道場を見渡す。
「あの……女子部員さん、結構いません?」
少ないと聞き、5、6人ぐらいなのかな?なんて思ってたのに……20人くらいは軽く居て、聞いてた話と違う。
「少ないじゃないか。女の子はいくら居ても足りないからな。特に……君みたいな子は貴重だ」
「止めてくれますか。そんな不純な動機で勧誘するのは」
先輩が私の髪に向かって伸ばしかけた手。それを隣に座る家康が押し返す。
「不純な動機???」
「自覚なし子ちゃんのお前には解らないだろうな」
自覚なし子ちゃん?
政宗の言葉もよく解らないし、何故か目を合わせたままの先輩と隣で不機嫌になっている家康もよく解らない。
「お前は確実に入るんだろうな」
「当たり前です。その為にここに受験したんで」
「それ以外にも理由はありそうに見えるけどな」
先輩はズイッと急に身を乗り出し……
「俺は、君の入部待ってるから」
至近距離で爽やかに笑った。
ドキッ。
「きゃっー!戦国プリンスの悩殺スマイル!」
「羨ましい〜!!」
騒ぎ出したのは見学に来ていた、ギャラリーの女の子達。
(戦国プリンスって呼ばれているのも、何となく解る気がする///)
間近で見た笑顔。
思わずときめいてしまった。
「騒ぐなら出て行け」
「す、すいません」
道場に入って来た織田先生は、鋭い視線を騒いでいた女の子達に向ける。
「織田先生?何でここに?」
スーツ姿と道場のミスマッチな光景……すると秀吉先輩が、フッと笑った。
「弓道部の顧問だからな」
それを聞いて、隣でげっ!と短い声を上げた家康。途端にさっきよりも数倍、不機嫌な表情を浮かべた。
「不純な動機などで入部した者は、容赦なく叩き潰す。貴様ら、肝に命じておけ」
仁王立ちしながら、ニヤリと口端を上げる織田先生。騒がしかった道場が、一瞬で静けさに包まれた。
「……何か、威圧感半端ないな」
耳に届いたのは、
政宗のしみじみとした声。