第167章 はじまりの物語
帰り道___
「ねぇ、政宗は部活何入るの?」
「まだ、未定だな。お前は?」
「う〜ん。それが今日、弓道部の人にすっごい勧誘されちゃって」
家康は勿論、弓道部だよね?その問いかけに俺は頷き、誰に勧誘されたのか聞くとひまりは神社で会った人だと答える。
「私、未経験者だからって言ったんだけど……女子部員少ないからぜひって言われて」
「……わざわざ教室まで来たの?」
「うん。私のこと覚えてくれてたみたいで。……あれ?でも何でクラス解ったのかな?」
名前も知らない筈なのにね?不思議そうに首を傾げたひまり。特に気にもとめず交差点の信号が変わるといそいそと渡り……
「二人とも早くーー!この桜並木すっごい綺麗だよ!」
舞い散る桜を背景にウサギみたいに跳ねながら、俺達に向かって手を振る。
「……なぁ、もしかして自覚なし子ちゃんか?あいつ」
「……かなりね」
わざとかと思うぐらい俺の気持ちには気付かないし。基本何事にも鈍感。今だって桜を手の平に乗せ見上げる姿を、すれ違う男達がじっと見ているのも気付いてないし。
点滅し出した信号を見て急いで渡る。
(正直、自覚されても困るし。されないのも困る)
「明日三人で弓道部の見学行こうよ!ねっ?」
政宗と一瞬目が合う。
その目は明らかに遠慮してない目。
(自分も、入学して早々……っとに)
はぁ……。溜息を吐いた俺。
この一年は攻めより、ひまり守んないとやばそう。
変な虫から。