第167章 はじまりの物語
下駄箱で靴を履き替え、校門に向かう。
「A組の担任の先生、校内を案内してくれた人だったね!」
「っとに、最悪だし。ちょっと寝てたらいきなり、拳骨とか……あり得ない」
家康は、思い出したように軽く頭を撫で不貞腐れる。私がその態度にふふっと笑った時。
「あの……ちょっと、良いですか?///」
現れたのは、顔を真っ赤にした可愛い女の子。手に握ってる手紙を見て、いくら鈍感って日頃から言われている私でも……この状況は掴める。
(入学式早々、もしかして告白……?)
家康のモテぶりに、少し感心しつつ……
「え、えっと、私先に行くね!」
空気を読んで、その場を離れようとした時。
(え………)
突然引き寄せられる肩。
女の子の顔が一瞬で曇る。
「………何?急いでんだけど」
家康の冷たい声が響く。
「……や、やっぱり何でもないです。失礼します!」
一礼して立ち去る女の子。頭を下げる前に一瞬だけ見えた表情は……今にも泣き出しそうだった。
「な、何で!あんな冷たい言い方するの!」
「……ひまりには、関係ない」
「そうだけど!でも……っ……」
関係ない。
そう言われて、私は途中で口籠る。
「何で、ひまりが泣きそうな顔すんの?」
(解らない。何でだろう。家康が女の子の気持ち無下にしたから?それとも……)
家康は黙り込む私に溜息を吐き、頭を軽く小突いてくる。
「ならさ、入学早々何にも知らない奴にいきなり告白されたら……ひまりなら、どう思う?」
「え?私なら……」
嬉しい?ううん。まだ、何にもお互い知らないのに……いきなり好きとか言われたら……私ならきっと。
「…………困るかも」
「そうゆう事。……行くよ」
(だからって、受け取るぐらいは良いのに……)
そう言いたい。
けど、歩き出した家康の背中を見て私は飲み込んだ。