第167章 はじまりの物語
戦国学園入学式___
「新入生代表、前へ」
首席合格した家康は、軽く返事をして立ち上がる。
(頑張って!)
心の中で一生懸命エールを送る。けど、家康は緊張した様子なんか少しもなくて、猶予なく壇上に登ると原稿を取り出す。
「暖かな春の訪れと………」
さっきまで、面倒とか帰りたいとか言ってた姿はそこには無くて……全校生徒に向けた真剣な表情。
周りにいた女の子達がヒソヒソと何かを話す中、私はただ静かに家康の落ち着いた声に耳を集中させた。
式も終わり、掲示板に張り出されたクラス表を見て私は教室に移動する。
(えっと、私は確かB組だから……)
家康はお隣のA組。クラスが別々で少し残念だけど、それでも新しい環境に私はワクワクして軽く頬の緊張を解いてから、教室に。
(知ってる子、居るかな?)
教室の中を見渡すように、キョロキョロと首を動かす。すると、見覚えのある男の子が窓際に座っているのが見えて私は駆け寄った。
「おはよう!えっと、私のこと覚えてるかな?」
「お前、確か……ケーキ美味そうに食ってた」
「ふふっ!凄い偶然だね!私、ひまり。宜しくね!」
政宗君だよね?と、一応確認をする。
「あぁ。伊達政宗……政宗だけで良い。宜しくな」
政宗は肩肘を付きながら、ニカッと笑う。大好物のケーキの話題ですっかり盛り上がり意気投合した私達は、入学式初日ですっかり仲良くなった。
「席につけ〜〜」
優しそうな担任の先生。
雰囲気良さそうなクラス。
(沢山、友達出来ると良いなぁ)
そんな事を思っている間に、下校時間になっていた。