第167章 はじまりの物語
そして桜舞う四月___
戦国学園に無事に合格できた私は、真新しい制服に着替える。ブラウスに赤と灰色のチェックのスカート。首に赤いリボンを付けて最後に、紺色のブレザーを羽織った。
(変じゃないかな?)
鏡の前でクルクル回りながら確認する。切り揃えた前髪を手で押さえ、最後にピンク色のリップを塗る。
「お母さん!どう?似合う??」
「あら、凄く可愛いじゃない!まだ、時間あるし家康君に見せて来たら?」
「そうする!朝ごはん、後で食べるから!」
私はもう一度玄関の鏡でチェックしてから、家康の家に向かう。
「おはようございます!」
「きゃー!ひまりちゃん!可愛い〜〜」
出迎えてくれたおばさんは、私の姿を見て嬉しそうに手を握りブンブンと降る。親子でも普段からクールな家康とは正反対で朝からテンションの高いおばさん。凄い綺麗でいかにもマダムって感じなのに、中身はお茶目ですごく優しい。
私は小さい頃からおばさんが、大好きだった。
「やっぱり女の子は良いわね〜ひまりちゃん!早くお嫁に来てね!」
「あはは……家康に怒られますよ?」
会う度に口癖のようにそう言われて来たから、もう慣れっこ。でも、つい苦笑いを浮かべてしまうのはおばさんの瞳が最近、冗談に見えなくなってきたからかもしれない。
「……朝から騒ぎすぎだし。母さん、目玉焼き焦げそうだけど」
「いけない!つい、忘れて……!」
おばさんは、パタパタと忙しくキッチンに向かった。
「おはよう!制服似合うね!」
家康は赤いネクタイを少し緩めながら……
「どうも……ひまりも……まぁ……そこそこ似合ってるんじゃない?」
「そこそこ?それ褒めてる?」
口を尖らせ、文句を言う。
「俺なりの最大限の褒め言葉だし」
頭を軽く叩かれ……
(あ……。久しぶりに見た。家康の優しい笑顔)
何だろう。
見慣れない制服着てるせいかな……?
いつもより、家康が格好良く見える。
「じゃ、じゃあ後でね!玄関の前で待ってるから」
私は家康が何か言う前に一人で外に飛び出す。
(……私、熱でもあるのかな?)
熱くなった頬を押さえながら、自分の家に戻った。