第167章 はじまりの物語
私はぎゅっとノートを握りしめ、1ページ1ページ、絶対に大切に使おうと心の中で決める。
「ありがと!大切にするね!」
「……たかが、ノートで大袈裟だし」
嬉しくて自然と溢れた笑顔。家康はうっ、と何故か喉を詰まらせるとプイッと顔を背けた。
(ふふっ、耳まで真っ赤!)
照れてるのかな?私はノートを抱き締めたままクスクス笑う。すると家康はこっちを向いて「何で笑ってんの?」って、不機嫌そうな声で私のおデコを人差し指でツンと弾く。
(訂正するよ……)
私の幼馴染は……
7割意地悪で、3割優しいに。
「このノート。何処で見つけたの?」
「絶対、言わない」
ちょっとした、意地悪返し。
私は知ってる。
このノートが女子中高生で人気の雑貨屋さんでしか、売ってない事を。男の子のお客さんなんて滅多に見たことない。
「ふふっ。……よし、頑張ろうかな!ちゃんと採点してよ。家康先生?」
「……その言い方、何か腹立つんだけど」
私は時折質問しながら、問題を解く。
全部解き終わり、
「はい。ちょっとはギリギリから脱出したんじゃない?」
73と書かれた点数を見て、私は思わず苦笑いを浮かべた。