第167章 はじまりの物語
喫茶店を出た後、私は嫌がる家康を無理矢理引っ張り……「戦国学園」と、書かれた門の前に来ていた。
「願掛けには一番!」
「……意味、解んないし。大体、生徒じゃない奴入れてくれるはず……」
ウィーン。
「貴様ら何をしておる?」
門の前に横付けした赤い高級車の窓が開き、そう声を掛けてきた男の人。サングラスに、びしっとしたスーツ姿。眩しいぐらいキラキラしていて、セレブ感が凄い。
「あ、あの!私達この学園に受験する予定でちょっと見学に……決して、怪しい者では!」
私が慌てて答えると男の人はサングラスを頭の上に乗せ、ニヤリと笑った。
「なら、案内してやる。暫し、待て」
「あんた、この学園の関係者?……見た目からして胡散臭いんだけど」
家康は思いっきり疑いの目を向ける。
私が失礼だよ!と言っても、本当のことだしと不機嫌そうに眉を潜める。すると、男の人は人差し指を立てまるでこっちに来いと言うようにチョイチョイと動かす。
「何?なんか文句で…も…っ!!…てぇ!!」
車内を除き込むように身を乗り出した家康。男人はその頭に、容赦なく拳骨を落とした。
「俺はこの学園の教師だ。目上の者に、言葉を慎め。くそ餓鬼」
「えっ!先生なんですか!?」
「歴史教科、担当。織田信長。しかと胸に刻んどけ」
拳骨を貰った頭を摩る家康の隣で、私は歴史という言葉に思わず敏感に反応してしまう。
実は一番苦手な教科。
(入学したら、赤点取らないようにしないと)
『織田信長』