第167章 はじまりの物語
私達は待っている間、中学三年間の思い出に花を咲かせる。って言っても、殆ど私が話して家康は相槌打ったりツッコミ入れたりするだけ。それでも久々に幼馴染と過ごす休日は楽しくて、私は終始ご機嫌。
「卒業式の時、後ろの方だったらやだなぁ……」
「チビだと、何にも見えないからね」
「家康だって、ついこの前までチビだった癖に!」
「……いつの話してんの」
入学当時は数センチしか無かった身長差。
今では20センチ以上離れていて……いつの間にか見上げて話すように。
(そう言えば、三年生になる少し前だよね。家康がモテだしたの)
最初は皆、愛想悪いとか、話しにくいとか言ってたのに。いつの間にか……
ーー頭は良いし!
ーー素っ気ない所がクールだし!
ーー弓道部のエースだし!
ーー格好良いし!
に変わってて……モテモテ。この前も同じ弓道部の子が、告白してたって誰かが言ってた。
(もう、返事したのかな?)
「……さっきから、見過ぎ」
「へ///ご、ごめんっ。そ、その身長伸びたなぁ〜って思って!」
慌てて視線を逸らして誤魔化す。
「お待またせしました」
「うわぁ〜♪桃がいっぱい!美味しいそう!」
「やっぱ、一口頂戴」
「だめ!」
家康からフォークを取り返し、ケーキのお皿を守るようにずらす。
「ん〜〜幸せ♡」
甘酸っぱい桃を頬張っていると、ふと横に人の気配。
「良い顔して食うな、お前。作り甲斐がある」
「ふぇ?」
突然現れた同じ年頃の男の子に頭を、ぽんぽんと叩かれる。
「作り甲斐がって事は……もしかして!あなたが!」
「……政宗だ。良かったらまた、食いに来い」
ニンマリとした笑顔。それが何処か頼りがいがあって、優しい雰囲気がした。
『伊達政宗』