第167章 はじまりの物語
俺は待ち合わせ場所にある、時計台に背中を預け……携帯に表示された時刻を見てはぁ。と白い息を吐く。
ーーご近所だからこそ、たまには違う場所で待ち合わせしたいの!
首に巻いたマフラーに顔を埋め……昨夜、幼馴染とした電話のやり取りを思い出す。
(遅行するぐらいなら、止めておけばいいのに)
俺は携帯をズボンのポケットしまい……
「お待たせ〜♡待った?」
「全然。今、来たとこだから気にするな」
近くで待ち合わせしていたカップルの台詞に、呆れたように頭を振る。
(俺には絶対、あんな台詞言えないし)
多分来た瞬間、すっごい不機嫌な顔で愛想ない台詞しか自分は言わない。
ってか言えない。そもそも言い出して、遅行するとかあり得ない。
(あり得ないけど……)
自然と口元がにやけそうになった時。
ピロンッ。携帯の音が鳴る。
『ごめんねっ!今、走ってるから!もう少ししたら着くから、おいちぇかないでーーーー!泣』
置いてが『おいちぇ』に変換間違えしてるメール。それに思わず俺はブッ!と、吹き出す。
(仕方ない)
俺は短い文面を打ち、返信。それから携帯の画面を消し、今度は自分の手ごとポケットに突っ込んだ。
「最初から、置いてくつもりないし」
『ばーか。走るな、ドジだから』
必死で走ってくる幼馴染の姿を想像するついでに、俺は来た時の台詞をガラにもなく考えいた。