第167章 はじまりの物語
pipipi……
ん〜〜。
ゴソゴソと手を伸ばし……
目覚まし時計を止める。
(まだ、7時……もう少し……!!)
ガバッ!
「大変〜〜〜〜っ!!」
ーー遅行したら、先行くから。
幼馴染の台詞が頭に浮かんで、顔が青ざめるのと同時にベットが沈む。
私は布団を放り投げ、パジャマのボタンを外す。昨夜、悩みに悩んだ花柄のニットを着て膝丈のデニムスカートを履き、コートをクローゼットから引っ張り出した。
教科書や参考書で散らかった机。それを見て昨晩、片付けもしないで寝てしまったことを後悔する。
(確かココに置いたは…ず……)
私はゴソゴソ……ガサガサ……と、机の上をあさり見つけたある物をカバンの中に仕舞い込むと、部屋を飛び出して階段を急いで駆け下りる。
「お母さ〜〜ん!あれ程、起こしてって頼んだのにっ〜〜!」
「起こしても起きなかったのは、貴方でしょ!」
「うぅ〜〜っ」
いつまで甘えてるの!台所に立つお母さんに叱られながら、出来上がった美味しそうな朝食を見て、ヨダレが出そうに。
(食べたいっ……でも!)
誘惑を振り切り、脱衣所に私は向かう。急いで歯ブラシとコップを持ち歯をササっと磨いて、髪型をセット。仕上げにはピンク色のリップを塗り、コートと荷物を抱え、普段の私ならあり得ないようなスピードで茶色のムートンブーツを履く。
「行ってきま〜〜す!!」
行ってきますの挨拶だけは忘れずに、待ち合わせの場所へと冷たい風を肌に感じながら走り出した。