第23章 はぐれた心の先に…(14)※R15※
今にも涙で溢れそうなひまりの頬を、
空いた方の手でそっと、包む。
握ったままのひまりの手が小刻みに震えているのが解り、俺はその手をゆっくりと自分の口元まで運ぶ。
「好きだ……どうしようもないぐらい、ひまりのことが……好き過ぎて自分を見失うぐらい……」
愛してる。
溢れ出したひまりの涙が、
俺の指先に伝っていく。
その瞬間、
ずっと繋いでいた手が同時に離れ……
代わりに俺の腕がひまりの背中に回り、飛びつくようにひまりの腕が俺の首元に回る。
「わ、…たしも、私も家康が好き。どうしようもないぐらい、どうしても止めたくないのっ」
家康じゃないと嫌なの。
家康が笑ってくれないと嫌なの。
家康が幸せじゃないと嫌なの。
家康が辛いのは嫌なの。
「そうじゃ……ない…と、私が…嫌なのっ」
泣きながら、
まるで我儘を言うようにひまりは……
俺の胸の中で一緒懸命伝える。
俺は狂いそうな程、
そんなひまりが愛おしくて、
欲しくて、堪らなくて……
鼻先が触れそうな距離までグッと腕を引き寄せる……
「……いえやっ……んっ」
俺の名前を呼び終わる前に、
ひまりの唇を奪う。
一度触れたらもう手放せる訳がない。
角度を変え、
貪るように、
何度も何度も重ねる。
「……っ……んっ……」
身じろぐひまりの呼吸が
切なげに耳元で掠めるように聞こえ、
俺は更に深く深くひまりを求める。
昼間だとかそんなのすっかり忘れ、何度めかの口づけをした後、俺は残り少ない理性でゆっくりとひまりの唇から離れた。
「……はぁ…っいえ…やす」
濡れた唇と潤んだひまりの瞳が、
一気に俺の身体を熱くさせる。
最後にもう一度、
触れるだけの口づけをすると
乱れたひまりの髪を掻き上げ……
「今日は帰さないから」
耳元でそう囁く。
するとひまりは一瞬、
肩をビクッと鳴らし
真っ赤に顔を染めながら、俯むくと…
小さくコクリ、と頷いた。