第166章 天邪鬼な君へ〜集大成〜
俺達は石碑に寄りかかる。
すると、佐助が次が最後だと叫ぶ声が聞こえ……昇りはじめた一筋の光。
「………神様。見てくれてるかな?」
ひまりはそう呟いた後、肩に掛けた羽織を搔き合せると天を見るように顔を上げた。その一言と月明かりに照らされた横顔見て、俺はひまりの手をそっと掴むと自分の方に引き寄せる。
「………見てるよ。きっと」
打ち上がる花火の音。
それに掻き消される前に呟いた。
「わぁっ!ハートの形!!!」
最後に夜空に上がったのは、大輪の花でなく……赤い変わった形をした花。ひまりは、嬉しそうに顔を向け見た?見た?と、はしゃぐ。
「さっきね!佐助君が仕掛けを作るって言ってて!きっとこの花火の事だったんだ!まるで心の花みたい!」
「………ひまり」
「ん?なぁに?」
「最後に約束しよう」
生まれ変わっても、
一緒に居よう。
「……私も同じ事、約束しようと思ってた」
二人は顔を見合わせ、笑う。
そして……
「「指切りげんまん……」」
永遠に続く愛を約束した。
石碑の後ろに、一輪の花。淡い光に包まれながら、芽生えた新しい命が天へと届けられ……天界に天女の姫が誕生しようとしていた。
そして時は過ぎ秋を迎えた___
二人の腕に抱かれた、
金色の髪に翠色の瞳の二人の男の子。
「ふふっ。また、家族に家康が増えたね」
「次は絶対、女の子が欲しい」
「なら、今度神様にお願いしないとね?天邪鬼な神様に、今度も家康にそっくりな赤ちゃんが授かりますように。って」
「ひまりを三人に取られないように、頑張らないと」
「父上はなかなか手強いよ?天邪鬼だから」
頑張ってね?
翠(すい)と天(あま)?
「……悪いけど」
誰にも渡さない。
俺だけのひまりだから。
〜天邪鬼な君へ〜完結〜