第166章 天邪鬼な君へ〜集大成〜
携帯に表示された時間を見て、
慌てて本を閉じる。
「もうこんな時間!遅行する!」
大急ぎで制服に着替えカバンを掴むと、階段を一気に駆け下り玄関で靴を履く。
朝ご飯は〜?と母親に聞かれ、私は首を振ってお弁当だけ受け取ると、元気よく手を挙げる。
「行ってきまーーす!」
そして外に飛び出す。
「…………寝坊?すっごい寝癖」
「ちょ、ちょっと本読んでたら夢中になっちゃって……えっ!寝癖?どこどこ??」
「………嘘」
「もう!家康の嘘つき!!」
「すぐ人を信用する、バカひまりが悪い」
通学路で二人は言い合いをしながら、肩を並べ歩き出した。
窓辺に置かれた本が風でパラパラと捲れ、とあるページで止まる__
「徳川家康」ーー何百年も続く平和な江戸幕府を築き上げた人物。幼少時代に辛い人質生活を送るが、後に生涯一人の女性を愛し、幸せな人生をも築き上げた。
その女性の名は「ひまり」と伝えられている。
そのページには、可愛らしいハートマークの栞が挟まれていた。
永遠に続く愛。
それは天邪鬼な君を愛して止まない…
一人の作者が思い描いた「物語」
〜fin〜