第166章 天邪鬼な君へ〜集大成〜
火の光が一つ一つ煌き、大輪の花はパラパラと音を立てながらたちまち夜空に消える。暫くすると、また炸裂音が鳴り響き儚い花を咲かせ再び姿をくらました。
「花火が上がるとたまや〜〜って叫ぶんだよ!!」
ひまりはそう言った後、花見団子を取りに茣蓙が敷いてある方に駆けて行った。
「………美しいな」
「……信長様も、一応そんな感情あったんですね」
俺は首を上に上げたまま、嫌味っぽく口を開く。
「貴様、俺を何だと思っておる」
「…………鬼」
少し間を開けた後にそう答えると、信長様はふんっ。と鼻から息を出すだけで、拳骨の雷を飛ばす気はなさそう。
「何で、あの時……ひまりを俺に預けたんですか?」
ひまりを御殿に預かる話になった時、はっきりとした理由は言わなかったし、どうせ断れないんだからと俺からも強く理由を聞く事はなかった。
ただ人質の立場が解るから。
多分そんな理由だろうと、意味あり気に笑うこの人を見て勝手に解釈を……ただ、月日が経った今はそんな有耶無耶な理由ではない気がする。
ーーお荷物になるとは限らん。
お前にとっても、俺にとってもな……
あの言葉は真は深い筈。
「………勘だ」
「へ……?勘?」
「……脱走し挙句に浪人に襲われかかったひまりを、無事に城に連れて帰った時だ……」
貴様の瞳は、
心底、安心した瞳を浮かべていた。
「……俺が幼き頃に見た、懐かしい瞳でひまりを見ておったからな」
信長様はその後、口を閉ざす。
「良かったら、信長様もお団子如何ですか?」
「……俺はいらぬ。折角だ二人で食え。代わりにそうだな……後で酌をしに来い」
背後から団子が乗った皿を差し出すひまりの頭を撫でると、秀吉達がいる茣蓙の方へと戻って行く。