第166章 天邪鬼な君へ〜集大成〜
桜の真下に敷かれたゴザの上に全員が座るのを確認してからひまりは、重箱を真ん中に並べフタを開ける。
「じゃ〜〜んっ!!頑張ってみましたっ!」
『「お〜〜っ!!」』
だし巻き卵や煮物、酢の物に巻き寿司など__色とりどりの料理を見て、空腹状態だった武将達は歓喜の声をあげた。
一斉に箸を持つと手を合わせる。
『「『頂きます』」』
美味いと言って食べる武将達を見て、朝から団子屋の台所を借りて作った甲斐があったとひまりは思い、少しでも日頃の感謝が伝わればと一生懸命持て成す。
「秀吉さん、光秀さんいつもありがとうございます」
「俺達は何もしてない」
「そうだな、秀吉は女を泣かせることしかしてないからな」
「ふふっ。相変わらずモテモテみたいですね?」
ひまりがクスクスと笑うと、二人もつられて口元が緩む。
感謝してるのは寧ろ自分達の方だ。口には決して出さなかったが、秀吉も光秀も想いは同じ。二人の中は相変わらずだったが、あの水を掛けられた日から少し何かが変わっていた。
「政宗、三成君。料理どうかな?」
「出汁もよく取れてるし、また腕あげたな」
「はい!このだし巻きも実に鮮やかな赤色で……ぱくっ!」
「えっ!あぁっ!それは家康専用で!」
喉を押さえて咳き込む三成に、ひまりは慌てて近くにあった水を渡す。
「これ一気に飲んで!!」
「おい、それ水じゃなくて酒だつーの」
大の酒好きの幸村は自分が飲もうと、盃ではなく湯飲みに酒を入れていた。ひまりがさっき三成に渡したのは、まさにそれ。
「えぇっ!!ま、待って三成君!」
しかし時既に遅し。
三成は一気に酒を飲み干し……
「あわわわっ…〜〜…」
もう、何が原因で顔を茹で蛸のように赤くなっているのか解らなくなっていた。
ふと少し離れた場所で、一人木に背中を預け桜を見上げる信玄に気づく。
「今日は、本当にすいませんでした」
「礼を言うのは、俺の方だ。こんな機会なかなか無いからな」
大人の落ち着いた雰囲気に、ひまりは胸を撫で下ろし頭を下げた。
「信玄さんも後で、一緒にお団子食べに来て下さいね!」