第23章 はぐれた心の先に…(14)※R15※
城を出る前。俺が贈った反物の着物に着替えたひまりは、野原にある花畑に着いた途端、あの時と同じように……
「わぁ……昼間も凄い綺麗だね!」
太陽の光を浴びた花を見て、歓喜の声を上げる。着物の柄と同じような小さな花たちが、足元で力強く咲いてた。ひまりは嬉しそうに笑顔を見せ、そして繋いだままの俺の手と腕を引っ張りながら、真ん中へと駆け出す。
「早く、早く!こっち!」
と、子供の様に無邪気に笑うひまりを見て、あの日此処に置いてきた気持ちが溢れそうになりながら、俺の中へとスッと戻る。
(……今度こそちゃんと伝えたい)
此処に来るまでの間、俺たちはあえて何も口に出さずひたすら走り続けた。
聞きたい事があり過ぎて、
もっと違った形で触れたくて、
言いたい事が山程あるのに、
繋いだ手の温かさが、離れていた時間を全部埋めてくれる気がして……
そのぬくもりだけで充分だった。
でも、此処に辿り着いた今は違う。
俺は手を繋いだまましゃがみ込むひまりの隣に、片膝をつき、立てていない方の足で体を支える。
「風……気持ちいいね」
「……だね」
サァッー……。
風が吹き、長い栗色の髪を一房揺らす。
「……ひまり」
愛おしい名前を呼びながら、俺はサラサラと風に靡く綺麗な髪に指を絡め、そっと搔き上げる。
それに反応するように
ひまりはゆっくり、
身体ごと俺の方に向けた。