第164章 あなたにもう一度〜最終章〜中編
「まだ、貴様に聞いておらんのだろ?」
首を縦に動かして返事をする。すると信長様はニヤリと笑った。
「ならば、来世に帰る事はない筈だ。様子を見る限り、芯から気になると言う感じだったからな」
「………もし、架橋がなかったら」
あの時、ひまりは織田と徳川の絆に……。
「恐らく、織田家の姫という立場でなかったら……と、言いたいのだろう」
ーー喜んでお受けします。
それこそ、一切の迷いなくそう俺は返事をした。
ずっと、ずっと欲しかったひまり。触れたくて、ずっと触れれなかった手を握りしめた。
(でも、築姫との同盟を受け入れるつもりで居たのも……確かだ)
自分の欲を捨て、諦めようとした。ひまりに危害が及ぶくらいなら、身を引いて野望に走ろうと。
その後は、どうなった?
例え後に離縁したとして、ひまり以外の女を一度は抱き……想いを一生隠して過ごしたのだろうか。それとも必死に忘れようと、手当たり次第女を抱き別の野望を見つけていたのだろうか。
(もし、ひまりに聞かれたら……)
俺は何て答えるんだろう。