第164章 あなたにもう一度〜最終章〜中編
今朝から半日がかりで準備を終えた私達。ゆっくりする間も無く、最後の仕上げにい草で編まれた茣蓙を広げ、その上に大きな重箱を置く。
(後は、お酒でしょ?それと〜)
私は鼻歌を口ずさみながら、満開の桜の木の下で走り回る子供達に視線を移すと……息をすぅと吸い込む。
「二人共〜〜佐助君の方の準備、終わったか見て来てくれる?」
口の横に手をあて、少し離れた場所で遊んでいる竹千代と時姫にお願いをする。はーい。と元気良く返事をして、手を繋ぎながら作業している佐助君の元に走り寄る二つの小さな背中。
「二人共本当に可愛いね!私も早く欲しいなぁ〜」
その姿をしばらく見つめていると、背後からひまりちゃんの声。振り返るのと同時に花見団子を積んだお皿をはいっ!と、差し出され、私は落とさないように気をつけながらそれを受け取る。
「うわぁ〜美味しそう!ありがとう!」
ひまりちゃんは、どういたしましてと言う感じでニッコリ笑うと……「これは味見用だから」と、一番上に乗っていたお団子を二本掴み茣蓙の上に座った。
「お、いひ〜〜」
私もその隣に座りお団子をもぐもぐと頬張る。串に刺さったピンク、白、緑の団子。花見にはかかせない、三色団子はいつの時代でも変わらず優しい味がした。
「旦那さんは、子供好き?」
ふと、さっきの言葉を思い出し何気なく質問してみる。
「う〜〜ん。嫌いではないみたいだけど、当分は夫婦二人で良いかなって言ってて」
「そっかぁ〜。もしかしたらひまりちゃんの事、まだ取られたくないのかもしれないよ?」
「そ、そんなことないない!///うちは絶対ないです///」
私が冷やかすように言うと、照れながら顔を真っ赤にして、手をパタパタさせるひまりちゃん。その姿が何故か微笑ましく見えて、私は日頃の家康と竹千代の話をした。
「息子さんにヤキモチなんて、家康さんからは全然、想像出来ないです!」
面食らったように声を上げるひまりちゃん。彼女の中の家康像とはかけ離れているみたいで、私もつい笑ってしまう。
「ふふっ。だから、次も絶対女の子が良いからって、何度も言われちゃって……」
そっと自分のお腹に触れる。