第163章 あなたにもう一度〜最終章〜前編
俺はハッとして後ろを振り返る。
「急にどうした?間抜けな顔をしおって」
「今日は……」
そうだ。
四月一日は、
時姫の誕生日と……。
「嘘を吐いて良い日だ!!」
「な、何だ!そんな日があんのか!?」
『「幸村!!」』
何処からか現れた幸村は、瞳をどんぐりのように丸くして立っていた。ひと月程前に佐助と共に春日山に戻って行った筈の幸村。
(何でここに……)
俺達は近くの河原に移動し、ここに来た経緯を幸村から聞いた。
「これが佐助の部屋にあってよ」
俺は差し出された紙を受け取る。
「ひまりさんを攫いに行く……?な、何これ!?」
「だろ?俺も見た時は思わず吃驚返ったつーの!まぁ、どうやら嘘みてぇだし」
幸村はホッと息を吐きかけ、腰掛けるのには丁度良い大きさの石の上に座った。
「まぁ、俺達は真に受けてのこのこと
馬鹿な真似をする佐助を止めに来たつーかよ」
「俺達……?まさか、謙信と信玄も来てるのか?」
信長様の言葉に幸村はそっ。と言って軽く頷く。
「謙信の方はどうやら、止めに来た方じゃなさそうだけどな?」
俺に向けてニヤリと笑う幸村。
(あの変態!便乗して攫いに来たのか!!)
そんな事、絶対させないし!
その言葉に反応して、俺は再び走り出した。