第163章 あなたにもう一度〜最終章〜前編
そして同時刻。
森の中の捜索をしていた、政宗と三成。
「……ったく何処行ったんだ。あのお転婆姫は」
「しかしひまり様が佐助様と駆け落ちなど……考えられませんが」
三成は足場の悪い斜面を歩きながら、首を傾げる。政宗も同意見だと言うように、足を進めながら険しい表情で頷く。
「確かにあり得ないな」
「ここ数日も、実に仲慎ましく過ごされていました。やはり何か他に理由があるのではないでしょうか?」
二人は草木を掻き分け、静かな川原に着くとつい二ヶ月ほど前の出来事を思い出していた。
昼間に突然、家康の誕生祝いにある料理を作りたいと、政宗の所に訪れたひまり。
たまたまそこにお茶を淹れに来ていた三成も居合わせ、三人で仲良く台所を囲んだ。
ーーで?何作る気だ?
ーーうん!カレー!!
ーーかれー?聞いたことのない料理名でございますね。
ひまりは二人にカレーは来世の食べ物だと説明し、家康が夢の来世で食べた事をつい最近知ったと話す。
ーー凄く美味しかったから、また食べたいってこの前言ってて。でもこの時代ではスパイスは手に入らないから諦めてたんだけどね。
ーーまさか、信長様が手に入れたとかか?
ーー正解!!駄目元で頼んでみたら、何処からか探して来てくれたんだ!でもやっぱり少し感じが違うから、味付けを政宗に手伝って欲しくて!
ーーあまりお役に立てませんが、私もお手伝いさせて下さい。
ーーありがとう!三成君!
ジャガイモを剥きながら、ひまりはワクワクを隠しきれない様子で家康の喜ぶ顔を想像し、終始笑顔を浮かべていた。
ーー出来た!!流石政宗!味もバッチリだよ!
ーー良かったな。早く家康に持っていてやれ。
ーー素敵な祝いになりますね、きっと。
二人共本当にありがとう!
政宗も三成もあの眩しい笑顔は、何時迄も忘れずにいた。
「ささっと見つけて、あの笑顔。家康に届けてやらないとな」
「そうですね。きっと何かの間違いですから」
三成はそれこそ、時姫も居なくなられては困る。そう思い、川原から離れようとした時。
「貴女様はもしかして!!」
「三成、どうした?でかい声出し……!!!」
二人はある男を見て、呆然とその場に立ち尽くした。