第163章 あなたにもう一度〜最終章〜前編
安土城に駆け込んだ家康。
「お願いします!」
捲し立てるように事情を話して深々と頭を下げる姿に……その場に居た全員は事の重大さを知り、城から一斉に飛び出した。
秀吉と光秀は城下町を歩き、
店を一件一件根気よく足を運ぶ。
「本当に居なくなったのか?別に喧嘩もしてない様だし……」
「クックッ……佐助と一緒とは。あり得ないようであり得る」
秀吉は顎に手を添え、歩きながら考え込む。どう考えてもひまりが取った行動は不自然……これと言った理由もなく出て行く訳がない。特に喧嘩した覚えもないという家康の話を聞いて、腑に落ちない気分になる。
「……まぁ、あの家康に頭下げられたら、な」
「あの捻くれ者を、あそこまでさせた女だ。……家康だけじゃない。俺達にも必要な存在だ」
「………そうだな」
珍しい光秀の言葉に秀吉は驚くことも無く……二人は初めてひまりに怒鳴られた日の事を、思い出していた。